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2022.04.13 ブログ
今回は認知症患者さんのお口の中が健常者のお口と比べてどのようになっていくかをお話していこうと思います。
認知症患者さんのお口の中または歯科診療上の問題点としては主に下記の6点が挙げられます。
1 健常者の口の中より虫歯・歯周病が多くなる
2 入れ歯の取り扱い・管理ができなくなる
3 口を開けることを拒否する時もあり、粘膜疾患の悪化が著しくなる
4 噛む力の低下により低栄養リスクが高まる
5 摂食嚥下機能が低下する
6 入れ歯未装着者は認知症を発症しやすい、または進行が早まる
では、これら6つをより詳しく説明していきます。
1 健常者の口の中より虫歯・歯周病が多くなる
認知症患者さんは、自発的な清潔行動の低下、手指の巧緻性の低下、視空間認知障害により、セルフケアは困難となってしまうため、歯周病や歯茎近くの虫歯が多発してしまいます。
2 入れ歯の取り扱い・管理ができなくなる
入れ歯の着脱ができなくなり、ずっとお口の中に入れ歯が入っていることもあります。すると、歯や粘膜が不潔となり、口腔内の悪化へとつながります。逆に新しい入れ歯を作っても使用しないのまま過ごすこともあり、栄養状態の悪化の原因ともなっています。
3 口を開けることを拒否する時もあり、粘膜疾患の悪化が著しくなる
認知症患者さんにおいては、口腔清掃の必要性を理解できなくなり、開口拒否が目立つようになってしまいます。そのため、口内炎やカンジダが発生しやすく、難治性となってしまうことも多々あります。また潰瘍や腫瘍の発見も遅れ、重症化することもあります。
4 噛む力の低下により低栄養のリスクが高まる
認知症患者さんは、入れ歯を入れることが困難になることより、噛み合わせを失うケースが多くなります。そして噛まないことで口腔周囲の筋機能の低下を引き起こし、摂食可能な食品が減少するため、低栄養となってしまうのです。
5 摂食嚥下機能が低下する
食具の使用の失行により、手づかみ食べとなりやすく、一口量の調節ができないため、誤嚥や窒息のリスクが上がり、誤嚥性肺炎を合併しやすくなります。
6 入れ歯未装着者は認知症を発症しやすい、または進行が早まる
認知症と咀嚼能力、歯の喪失、口腔衛生の関連を示唆する報告があります。また、歯がなくても義歯装着している人と20本以上歯を有した人とで比較したところ認知症発症リスクに差がなかったという論文も出ており、歯がなくても入れ歯を装着していることで認知症の発症を遅らせられる可能性もでています。
このことから、認知症患者さんのお口の中を定期的に口腔ケア、経過観察、治療していくことは、認知症患者さんのQOLを高めるためにもとても大事なことであると考えています。
次回は歯科診療をする上で、どのようにして認知症患者さんに対応するべきか書こうと思います。